
ジャパンセンターの緑茶売り場。スイーツと一緒に売られている伊藤園の日本茶や玄米茶 All photos by Satomi Iwasawa
世界各国のお買い物事情と、現地の日本商品を紹介する「世界の果てまでカッテミル」。風薫る季節にピッタリなのが「お茶」。今回はスイス在住の岩澤里美さんがかつて滞在していた紅茶の王国・イギリスの日本茶事情を伺いました。
ホットの緑茶は、普段から飲まれている
イギリスは紅茶の国。そう強くイメージしていた私は、20年前、イギリス中部に住み、イギリス人たちが紅茶と同じようにコーヒーも随分飲んでいることに驚いたものです。そのころは、日本で煎茶の葉を買ってイギリスに持ち帰っていて、現地のスーパーやコンビニでは緑茶の葉がまったく充実していなかったと記憶しています。
時が経ち、イギリスでは健康志向の高まりから、緑茶は普段のお茶の選択肢に入っています。イギリス人1,000人に聞いた「好きなホットドリンク」調査(※)では、
1位 イングリッシュ・ブレックファスト・ティー(37%)
2位 コーヒー(31.4%)
3位 ホットチョコレート(11.1%)
4位 緑茶およびアールグレー・ティー(5.7%)
5位 フルーツティー(1.9%)
という結果でした。
※イギリスの市場調査業OnePollが実施、2015年公表
というわけで、スーパーにはたくさんのメーカーの緑茶の葉が並んでいます。

高級スーパー「Waitrose」で販売されている緑茶の茶葉
外で飲むなら、ロンドンには数年前に京都の老舗・辻利や、和風カフェ「Tombo」がオープンしましたし、ほかにも様々なカフェで飲めます。
外では煎茶より抹茶(抹茶ラテ)がよく提供されている印象を受けます。
日本のペットボトル茶は、食品とセット売り
ペットボトルの日本のお茶は、日本食店に揃っています。
約2年前に新しく生まれ変わったジャパンセンター(創業1976年)をのぞいてみました。イートインスペースがあり、豊富な日本の食料品が魅力で、寿司や弁当、鮮魚などもあり、いつもにぎわっています。
伊藤園の「お〜いお茶」「抹茶入り」「抹茶入り玄米茶」「Relaxジャスミンティー」など各種、アサヒの「六条麦茶」「十六茶」、キリンの「生茶」、サンガリアの「あなたの濃いお茶」とより取り見取りです。珍しいものとしては、ハローキティーの「香ばしい麦屋(麦茶)」がありました。
ハローキティ―以外のメジャーなお茶は、寿司や総菜やデザートの売り場に一緒に置かれていて、「食べ物とお茶をセットで」という売り方が特徴的です。

ジャパンセンターの緑茶売り場。寿司と一緒に売られている
夕方訪れたのですが、寿司類の棚は「お見事!」と言いたくなるほど、寿司とともにお茶の数が少なくなっていて、お茶も飛ぶように売れている様子がわかりました。
ペットボトル緑茶は“特殊な飲み物”
ジャパンセンターでの様子を見ると、日本のペットボトルのお茶はとても人気だといえます。では、現地のスーパーやコンビニにも置いてあるかというと、そこまでは至っていません。ロンドン市内でコンビニやスーパーを回ってみましたが、見つけることはできませんでした。
とはいえ、イギリスのブランドで、ボトルの緑茶は販売されています。たとえば「MangaJo」です。

コンビニ「Nisa Local」にて。MangaJoのGreen Tea隣には、Coca ColaのFUZE Teaが並ぶ。green tea入りと書いているが、FUZE Teaも緑茶の含有量は0.14%と極めて少ない
Lemon & Green Tea風味を試しましたが、かすかなレモンとリンゴの味のみ。緑茶の含有量は1本250mlに2mlほどで、緑茶の味はほとんど感じられませんでした。
緑茶独特の風味はイギリスの多くの人にはまだ抵抗があり、お茶といえば紅茶。日本のペットボトル茶は、探さないとなかなか手に入らない代物です。
岩澤 里美(いわさわ さとみ)
教育・心理系雑誌の編集の仕事をしたのち、イギリスに留学、そしてスイス・チューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信社の通信員を経て、フリーランスライターに。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続け、サイトや雑誌で執筆多数。社会現象、ユニークなビジネス、文化の分野を中心に情報を発信中。www.satomi-iwasawa.com