
東西ドイツが統一した頃、「ほうれん草のゆで汁」と評さた緑茶も、現在は様々なフレーバーがついた、トレンディな飲み物になっている 撮影:岩本順子
世界各国のお買い物事情と、現地の日本商品を紹介する「世界の果てまでカッテミル」。風薫る季節にピッタリなのが「お茶」。今回はドイツ・ハンブルク在住の岩本順子さんに、ドイツでの日本茶事情を伺いました。
コーヒー文化のドイツ
今から30年ほど前、ドイツで友人たちに熱い緑茶を出すと、「ほうれん草の茹で汁みたい」などといったコメントが返ってきたものです。寿司やラーメン、抹茶や柚子などがドイツでも人気になるとは想像もつきませんでした。
ドイツでは、温かい飲み物と言えばコーヒーが主流です。オランダ国境に近い、ニーダーザクセン州のオストフリースラント地方だけが例外的な紅茶文化圏で、平均的ドイツ人の約10倍のお茶を消費しています。
筆者が住んでいるハンブルクの友人たちは、コーヒー派がほとんどですが、午後はお茶、という人もいます。近年、カフェがずいぶん増えましたが、英国スタイルのティールームも人気です。
スーパーには紅茶だけでなく、たくさんのメーカーの緑茶が並んでいます。

1990年代後半からドイツのお茶メーカーも緑茶ティーバッグを生産。2015年に販売がスタートした抹茶入りグリーンティー(左)が人気 撮影:岩本順子
トレンドは「抹茶」と「ユニークな抹茶入りドリンク」
緑茶のうち、現在最も人気が高いのが、抹茶です。OTG社のブランド、メスマー(Meßmer)は、2015年から緑茶と日本産抹茶のブレンド茶のティーバッグを、2017年からはオーガニックのインスタント抹茶ラテを生産しています。
同社によると、抹茶製品は人気が高く、特に抹茶ラテは目下のトレンド商品なのだそうです。
ドイツでボトルや缶入りのお茶といえば、長年、リプトン社のアイスティーしか選択肢がありませんでしたが、最近では、ユニークで美味しいティードリンクが増えています。

ドイツ産ティードリンクはフレーバー入りでほんのり甘め。炭酸入りも多く、ガラス瓶入りや缶入りが主流。チャリティー(右)はオーガニック製品 撮影:岩本順子
ハンブルクのレモネード・ベヴァレッジ社(Lemonaid Beverages)のブランド、ChariTea(チャリティー)のグリーンティー(1.59ユーロ)は、しょうが風味。同じくハンブルクのセイチャ社(Seicha)のスパークリング抹茶(1,69ユーロ)はライム風味で炭酸入り。
オーストリア産カルプ・ディエム社(Carpe Diem)の抹茶・スパークリング・グリーンティー(0.99ユーロ)は、梨としょうがの風味で、これも炭酸入りです。
ここでも抹茶の人気のほどが伺えます。
日本産ペットボトル茶も上陸
さて、日本産のペットボトルのお茶ですが、 ドイツの通常のスーパーにはまだ見当たらず、アジア系の食材店で見つけました。

日本のお茶が多数そろう中国系スーパー「原野(Yuanye)」。ハンブルク中央駅に近い、パークハイアットホテルの向かいにある 撮影:岩本順子
ハンブルク中心街の中国系スーパー「原野(Yuanye)」には、伊藤園の「お〜いお茶」(2.79ユーロ/約340円)とサントリーの「烏龍茶」(3.09ユーロ/約380円)がありました。

中国系スーパーで見つけた伊藤園の「お~いお茶」 撮影:岩本順子
同店では、日本と韓国の製品コーナーを設けており、お茶もそのコーナーにありました。
デパートの地下にあるアジア系スーパー「Go Asia」ではサントリー「烏龍茶」のほかに、伊藤園の「むぎ茶」(2.79ユーロ/約340円)と「Relaxジャスミンティー」(2.49ユーロ/約300円)を見つけました。
いずれの店舗でも、お茶コーナーの大半を占めていたのは、アジア各国のお茶で、タイ産のOISHI GOLDブランドの「かぶせ茶」や台湾産の「冷泡緑茶」(ともに1,39ユーロ/約170円)といった、日本スタイルの無糖の緑茶が揃っていました。
日本産のお茶は、1本あたりのお値段が他のアジア産より1ユーロ程度高いですが、味わいが上品で洗練されており、品質も良いので、違いがわかる人、日本製にこだわる人が購入しているようです。
(カッコ内は全て税込価格)
岩本順子(いわもと じゅんこ)
1984年からハンブルク在住。90年代は講談社「モーニング」ハンブルク支局を運営し、漫画の普及活動とドイツ語訳に従事。1999年にドイツのワイナリーで働いた後、執筆業、翻訳・通訳業で独立。 2005年からハンブルクでワインセミナーを実施。2013年にワインの国際資格WEST Diploma取得。著書に「ドイツワイン・偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)ほか。ドイツ・ニュースダイジェスト紙に「ドイツワイン・ナビゲーター」「ドイツ・ゼクト物語」を連載中。http://www.junkoiwamoto.com