
シマヤだしの素かつおだし。250g入り3袋で9,500チャット(約670円)
世界各国のお買い物事情と現地の日本商品を紹介する「世界の果てまでカッテミル」。今回はミャンマー・ヤンゴン在住のライター・板坂真季さんに現地の「だしの素」を紹介してもらいました!
ローカルスーパーも扱う「だしの素」
ミャンマーの最大都市ヤンゴンへ移住して6年目。私の食生活は自炊がメインで、作るのはもっぱら日本食です。一時帰国の折には大量の日本食材を買い込んできて、1年間ちょびちょびと大切に使っています。

地元も客しか来ないような小さなスーパーにも「だしの素」は売っている
ヤンゴンは2000年代後半あたりから日本料理店が増え始め、移住しだした2014年はブームの真っ盛り。専門店でしか買えなかった日本食材が、だんだん普通のスーパーでも手に入るようになってきていました。ちなみにインターネットが普及してまだ3年ほどのミャンマーでは、カミッテルのような便利なお買い物ウェブサイトはまだありません。
そんななか、2016年頃を境に躍進著しかったのが「だしの素」です。
今やローカルの小さなスーパーでも売っており、カツオだしの250g入り大袋が3,300チャット(約230円)ほどと、現地の物価からすれば若干贅沢な商品といえそうです。
調味料のひとつとして料理に投入
典型的なミャンマー料理といえば、「ミャンマー風カレー」と説明される煮込み料理「ヒン」です。
ヒンには肉や魚介類が入ったものから、豆やナスといった野菜しか入っていないものまで種類は様々。ちょっと贅沢な食卓なら、スープと野菜の和え物料理「アトゥ」とスープも添えます。だしの素を使う場合は、ヒン、スープ、アトゥそのどれであっても調理の最終段階で投入します。

トマトのアトゥ。最後にだしの素(空き瓶へ入れ替え済み)をふりかける
もともと、ミャンマーで広く流通する調味料には、魚介類の発酵ソースであるガピがあります。1930年代頃から、化学調味料も使うようになりました。つまりミャンマー料理はもともと、旨み調味料を多用する食文化だったといえます。
化学調味料への不信感が後押し
しかもだしの素が登場した頃、ミャンマー人は国内で流通する中国製化学調味料には有害物質が入っていると信じる人が多くなっていました。そのため、その代替品として人気がでたのです。

トマトのアトゥ。サラダと訳すことが多いが、「和え物」の方が近い
また、殺生を戒める仏教を敬虔に信じる人が多いミャンマーには、一定数のベジタリアンがいます。
しかも1年に3ヶ月間、雨安居(うあんご)という特に戒律を厳しく守るべき時期には、ふだん肉食をしている人も菜食に転じます。原材料にカツオか昆布かを選べる日本のだしの素は、時期や家族の嗜好によって切り替えやすい、使い勝手のよい調味料なのかもしれません。
板坂真季
中国やベトナムなどで計7年間、現地無料情報誌の編集を務め、2014年からヤンゴン在住。日本で出版される雑誌や書籍、ガイドブック、ウェブマガジンに加え、現地日本語情報誌などで編集や執筆、撮影に従事。取材コーディネートも行う。著作に『現地在住日本人ライターが案内するはじめてのミャンマー』(徳間書店)など。
次回は12月14日、ミャンマーの「カップヌードル」を紹介していただきます!