ラーメンブレイクしたスイス
10年ほど前までのスイスは、ラーメンが食べたくても日本食レストランに行くしかありませんでした。しかし最近はラーメン屋さんが次々に開店しています。それらのラーメン屋さんがクリスマスマーケットに屋台を出した時には感激しましたが、値段は15フラン(約1,700円)!
そのようにスイス人にもラーメンが浸透してきたのに伴い、リーズナブルなインスタントラーメンも身近なものになりつつあるようです。
スイスでは Coopと Migrosという2大スーパーが庶民の消費の大部分を支えていますが、どちらでも複数の種類が買え、取材日にはカップ麺の1種類が売り切れの快挙を遂げていました。1週間後に再び様子を見にいきましたが、入荷日は未定ということです。

スイスのスーパー、Migrosのアジアコーナー(撮影:中東生)
上段にある袋麺はその名も「Soba」。消費者の動向に敏感なこのスーパーで、この袋麺を3袋セットで 安売りしていた時にはたまげました! そして同ラインのカップヌードルも登場するや否や、人気を集めています。3.20フラン(約364円)の「Soba」カップラーメンは、よく見ると「Nisshin」とありますが、左に並ぶ定番の日清カップヌードル(2.40フラン=約273円)とは全く別物に見えます。
もう一軒の大手スーパーCoopにも取材すると、2014年から売り始めたカップラーメンは、メーカーを問わず売れ行きが伸びているとのこと。それに対応するためにカップラーメンの陳列棚は見つけやすい位置に場所を広げており、インスタントラーメンも「常備食」として普及しつつあるようです。
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元祖カップヌードルは…
カップラーメンの元祖・日清カップヌードルは25年前にスイスに留学した頃、中華スーパー等で既に売っていた記憶があります。日本に住んでいた頃はコンビニ等でカップラーメンを買って 忙しい時に温かい食事が出来る事に感謝したものですが、日本食に飢えている外国で「出会っ」た元祖カップヌードルには心底癒され、残ったスープにお冷やご飯を入れて「2度美味しい」食べ方をしていました。
日本食料品店NISHI JAPAN SHOPの店長西浜倩子(よしこ)さんによると、「オランダにある日清の工場で作られるようになってから、オランダ製の安い方へ客層が流れてしまうようになったので、日本からカップヌードルを輸入しなくなった」ということでした。
(編集部注: 1991年に「オランダ日清」設立、その後 2004年には「ハンガリー日清」に生産拠点が移っている)

NISHI JAPAN SHOP 1号店外観。チューリッヒの街外れにあるが、2号店は一等地に構えている(撮影:中東生)
創業39年を迎えようとしている老舗のNISHI JAPAN SHOPは1号店、2号店共に「マルちゃん正麺」(東洋水産)を置いています。 丁度レジ前の特設箱で売っていた2種類の正麺の横に、カップうどん、そば、焼きそばも置いていました。

NISHI JAPAN SHOP店内のカップ麺コーナー(撮影:中東生)
私が遭遇した 元祖カップヌードルは欧州産だったわけですが、日本産との違いは全く気付けませんでした。欧州人に合わせて味を変えることなく、日本人の嗜好が欧州に受け入れられたと言えるでしょう。
韓国製「辛ラーメン」の台頭
しかし、この10年ほどで日清と人気を二分する程台頭してきているのが、韓国のNONGSHIMの「辛ラーメン」です。韓国食料品店では特別コーナーも設けられていました。

辛ラーメンもじわりと浸透している(撮影:中東生)
中華食料品店でも、置いてあるのは日清かNONGSHIMです。
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さて、NONGSHIM製品の中でも一番安い(1.60フラン=約182円)カップラーメンの海老風味を試してみました。

エビラーメン
オレンジ色の粉末スープとお湯を入れて3分ジャスト。それでも麺はなんか硬めです。スープのオレンジ色に違わず、辛い!
麺をすすり上げて食べるとむせそうです。海老は超ミニ桜えび、でも風味がいい。あっという間に食べ終わり、昔のように残りスープにお冷やご飯を入れて煮込んでみると…本物のクッパのように美味しい!
麺は日清、スープはNONGSHIMと言えるかもしれません。日清の巻き返しをスイスより祈って止みません。
中 東生(なかしのぶ)
在外ジャーナリスト協会「Global Press」会員。Yahoo!ニュース個人オーサー。
東京芸術大学卒業後1994年国際ロータリー奨学生としてスイスに留学。 スイスロータリーの奨学金や大学の奨学金を得ながら卒業後もスイスを拠点に欧州でフリーランスとして活動。音楽専門誌等に寄稿する他、 政治、経済、宗教、教育、旅行等多岐に渡る分野で欧州発の記事を発信。現地の日本語冊子編集も担当し、欧州と日本を繋ぐ「民間大使」をモットーにしている。