
スイス、ビールの棚で日本のメーカーは?(撮影:中東生)
世界各国のお買い物事情と、現地の日本商品を紹介する「世界の果てまでカッテミル」。今回はスイスの中東生さんに現地の“濃い”ビール事情を紹介してもらいました!
【世界の果てまでカッテミル ビールシリーズ】
ミャンマー
四国の面積に約1,000件の醸造所がひしめく
歴史記述にビ ールが初めて登場するのは、今から約5,000年前のメソポタミア文明まで遡ります。そこからヨーロッパには、1,500年ほど前に伝わったのに対し、日本には約150年前、と歴史の長さが一桁違います。
そのヨーロッパの中心に位置するスイスは、オクトーバーフェストでも有名なビール大国ドイツに接し、少し北上すればベルギービールの発祥地にもひとっ飛び。スイス名物のブラートヴルスト(編注:ソーセージ)にもビールが良く合うとあって、ビール好きの人口は多いのです。海のないスイスでの貴重な淡水魚・エグリのビール衣揚げなど、伝統料理にも登場します。ビール醸造に必須の良質な水も豊富なスイスにはFeldschlösschen等の大手メーカーの他にも、地ビールが数多く存在します。
四国ほどの面積のスイス連邦内に954軒ものビール醸造所があるのです。
現地では「軽くて爽やか」の評判
そんな彼らにとって、日本産ビールはどのような存在でしょうか。
「軽い」「爽やか」「日本食に合う」という印象だそうで、わざわざ日本ビールを買いに来て、5歳くらいの息子さんに選ばせているお父さんもいました。チューリッヒの駅前通りにあるデパート「Jelmoli」の地下食料品売り場にはアジアのビールがズラッと並ぶコーナーがあるからです。
アサヒスーパードライは3.50Fr(約385円)ですが、バーコードから店員さんが調べてくれたところ、なんとイタリア産。以前業務用マーケットで注文した2ダース売りはイギリス産でした。ここにもブレクジットの影響が現れているのでしょうか。隣のキリンと、上段左端のサッポロはドイツ産だということです。

「Jelmoli」のビールコーナー。日本のビールは「軽さ」で人気。ものすごく目立つ「生」のビールは…?(撮影:中東生)
その隣の“生”の漢字が目立つ「iki」ビールは聞いた事ないとおもいきや、なんとオランダ発信の日本ビール。日本の材料を使って作っているということで、「ゆずと煎茶を使った のどごし爽快生きビール」の 柚子味と生姜味両方を買って帰りました。その隣には小江戸ビールが3種類(瑠璃と白と漆黒)並び、このJelmoliが私の知る限り最多の品揃えでした。売れ筋としては定番のキリンかサッポロということです。
日本のビールはマニアック? キリンの存在感、じわり
一般のスーパーでは、一応Coopが取り扱っていることになっていますが、街中の店舗ではタイのSingaビールは見かけても、日本ビールには出会えませんでした。郊外のショッピングセンター街店舗には定番のキリン等が売っているという情報です。
特殊なビールを探している人がきっと行き着くであろう、古くからあるドリンクマーケットの1軒に足を運んでみました。ちょうど桜柄のキリンビールが約半額になっていました。店主さんに聞くと「以前は他の銘柄も置いていたけれど、飛ぶように売れるのはキリンなので、キリンに絞るようになった」と話してくれました。
25年ほど前はアサヒスーパードライが一番人気だったような記憶がありますが、それだけキリンのヨーロッパ進出が成功したのかもしれません。
この他、ラーメン屋では常陸野ネストビールを勧められたこともありますが、小売店では見つけられませんでした。
日本通のスイス人おすすめビールは「ヱビス」
家に帰ってikiビールを試すと、最初の柚子味は緑茶も柚子も感じられませんでしたが、爽快感のある味わい。生姜味はなんだか違和感のあるにおいで、両方とも3.90Fr (約429円)出すならば、やはり日本のメーカーがいいなと思いました。
お口直しにアサヒスーパードライ、キリン一番搾りと進むと、やはりホッとします。ということは、各社ともヨーロッパ人の味覚に合わせず、日本産ビールの味を踏襲しているということでしょう。
最後に、日本通のスイス人男性がビールの話をすると「一番美味しい日本ビールはヱビスビール。まろやかなのに濃い味!」などと、よく盛り上がっています。
サッポロビールさん、ヱビスビールを是非スイス進出させて下さい!
中 東生(なかしのぶ)
在外ジャーナリスト協会「Global Press」会員。Yahoo!ニュース個人オーサー。
東京芸術大学卒業後1994年国際ロータリー奨学生としてスイスに留学。 スイスロータリーの奨学金や大学の奨学金を得ながら卒業後もスイスを拠点に欧州でフリーランスとして活動。音楽専門誌等に寄稿する他、 政治、経済、宗教、教育、旅行等多岐に渡る分野で欧州発の記事を発信。現地の日本語冊子編集も担当し、欧州と日本を繋ぐ「民間大使」をモットーにしている。
次回は2月22日、スイスのお隣、ビールの本場・ドイツからお届けの予定です!