
サンガリア社の「あなたのお茶」もキリンの商品同様、アジア系スーパー・マーケットで扱われている(画像撮影:稲葉かおる)
世界各国のお買い物事情と、現地の日本商品を紹介する「世界の果てまでカッテミル」。風薫る季節にピッタリなのが「お茶」。今回はオランダ在住の稲葉かおるさんに、現地のお茶事情を伺いました。
紅茶から緑茶嗜好へ
オランダでは、お茶のことをThee(テェ)と呼びます。
10年ほど前までこの「テェ」は、ごく普通の紅茶を指す言葉でした。今でこそ、ミントや果物などのフレーバーを加えた、バラエティに富む紅茶がたくさん出回っていますが、オランダ人にとっての「テェ」は、どれも同じ香りがする、味気ない飲み物だったのです。
ところが、一昨年ほど前からこの「テェ」の世界に、Green Tea(緑茶)が紹介されました。ティ・バッグに入った緑茶に、レモンや桃の香りを加えた商品が発売されるやいなや、人びとの関心は、それまでの紅茶から緑茶へと移行しました。

オランダの老舗・Pickwick社は、5年ほど前から緑茶の開発に力を入れ始めた。オランダ語で緑茶はGroene Thee(グルーネ テェ)と呼ばれる(画像撮影:稲葉かおる)
この緑茶は、オランダのPickwick社によって発売され、たちまちヒット商品に。オランダ人の多くは、微妙なほろ苦さに驚くとともに、紅茶では味わえない独特な芳香に魅了されたといいます。香りや味がいいではなく、緑茶の成分が健康維持に役立つといった情報が巷に流れ、人びとの関心も高まりました。
ボトル化と、Matcha(抹茶)へのこだわり
商品も多様化しました。おいしい緑茶を手軽にと楽しみたい! という向きには、ペットボトルや手頃なサイズの紙パッケージが便利。
英国発祥のリプトン社が発売したLipton Green IceTea(アイスティ)をはじめとする緑茶の各製品は、200mlサイズから1.5リットルのファミリーサイズまで各種が揃っています。これら緑茶はストレートではなく、レモンや桃、オレンジなどのフルーツ風味で、白糖もしくは人工甘味料でほど良い甘さが特徴です。

リプトン社の1.5リットルの紙パック入り緑茶(中央)。白桃やレモンなどのフレーバーがある(画像撮影:稲葉 かおる)
いっぽう、日本のブランドも手に入ります。伊藤園「お~いお茶」や、キリン・ビバレッジの「生茶」で、おもにアジア系商品を扱うスーパー・マーケットで手に入ります。緑茶愛好家になると、わざわざこういったスーパーに出向き、多少高価であっても、メイド・イン・ジャパンの商品を購入している人が多いです。

ビールと同様、キリンから発売されている「生茶」は、緑茶通のみならず、純日本茶をアイスで楽しみたいオランダ人たちから人気がある(画像撮影:稲葉かおる)
キリン 生茶 PET 525ml

みんなの総合評価:4.35
こうした緑茶人気を後押しするような形で発売されたのが、抹茶を加えた緑茶です。Matcha(抹茶)の繊細な味と香りもまた、オランダ人たちにとっては新鮮で、その上、神秘的に感じられたとみえ、抹茶成分が何パーセント入っているか?といった細かい部分にまでこだわる、愛好家を生むほどの人気ぶりです。
緑茶、今後のトレンドは?
紅茶も緑茶も、「テェ」をホットでたしなむとき、オランダ人たちはクッキーやケーキ、チョコレートなど、スイーツを好んで食べます。アイスの場合は、ハムやチーズをはさんだオープンサンドや、ステーキなどと一緒に愛飲することが多いようです。
しかし、今の季節、オランダ人たちのイチオシはやはり緑茶だとか。庭でバーベキューを楽しみながら、フレーバー香る緑茶を満喫するのが最高なのだそうです。

スーパー・マーケット内でのディスプレイ。バーベキューに欠かせないのが、緑茶や紅茶(画像撮影:稲葉かおる)
その人気たるや、今や紅茶以上に緑茶を愛飲する人が増えています。今後、どのようなフレーバーが登場するのか、どんなGreen Teaトレンドが生まれるのか、興味は尽きないといったところです。
稲葉 かおる(いなば かおる)
在外ジャーナリスト協会「Global Press」会員。1984年に渡英し、1996年からオランダ・アムステルダム在。地方紙の翻訳・編集を経て、フリーライターに。政治経済問題からエンタメまで、欧州からの最新情報を日本の媒体に発信中。著書・共著に『ニッポンの評判』(新潮新社)、『世界が驚愕する日本人』(宝島社)、『世界の夢の図書館』(エクスナレッジ)等がある。