梅雨に入った。しとしと雨に気分も滅入る。
そんなとき、持っておきたいのがビニール傘。傘だけでもこだわって、滅入った気分に少しでも「アゲ要素」を入れたいものだ。ビニール傘にも、ワンタッチ式や手動、大きさの違いなんかでアゲ要素も変わってくる。
でもビニール傘って、こだわり、あんまりないよね……。雨が降ってきたからしかたなく買うことが多いし、梅雨が明けたら忘れてしまう。
そんな可愛そうなビニール傘を、名作コミック『美味しんぼ』(小学館)の登場人物・海原雄山と山岡士郎でクチコミをしてみようと思う。
究極対至高の傘
山岡「あんたは何もわかちゃいない。あんたにに本物のビニール傘を見せてやるよ、ついてこい」
雄山「ここに本物のビニール傘があるというのか、果たして買いたいと思えるか」
店員「少々お待ちください」
雄山「この話はなかったことにしてくれ。帰るぞ」
店員「えっ」
雄山「なんだこの傘の色は。素材を生かしておらん。私は透明の傘以外認めん!」
山岡「このカラフルさの良さがわからないっていうのか。貴様それでも芸術家かよ」
海原雄山と山岡士郎とのやり取りのクチコミの特徴は、まず山岡士郎。
雄山と対決するたびに「本物の●●を見せてやる」と言って、やたらどこかに連れて行こうとする。
そして、海原雄山。彼は見る(食べる)前に「この話はなかったことにしてくれ」と、試す前に難癖つけて否定する。
これは絶対あるので覚えるべし。『美味しんぼ』では、海苔に醤油をつけただけで、商談が破綻するのだ。
また、海原雄山は素材を大切にする。これで、完璧。
ビニール傘も、「究極対至高風」なやり取りにまみれたら、なんだか高尚なガジェットに思えてくるのは気のせいだろうか。
耐風ビニールジャンプ傘65cm
みんなの総合評価:3.5
神田桂一
一般企業勤務の後、週刊誌の記者を経て、フリーに。『ケトル』『POPEYE』などで執筆、初の著書『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(菊池良共著、宝島社)が続編と合わせて累計15万部のベストセラーに。