世界各国のお買い物事情と、現地の日本商品を紹介する「世界の果てまでカッテミル」。風薫る季節にピッタリなのが「お茶」。今回は中国・北京在住の伊勢本ゆかりさんに、現地のお茶事情を伺いました。
中国のペットボトル茶は「甘い」
お茶の本場中国。
お茶は茶館や家庭で茶葉を使用して暖かいものを飲むのが一般的で、外出時には空き瓶や水筒に茶葉と熱湯を入れて持ち運んでいる姿を見かけます。これには中国、特に本土で冷たい飲み物を飲む習慣がないという事情もあります。

スーパーの棚一面に並ぶ茶飲料。そのほとんどが甘い(写真:伊勢本ゆかり)
その中国にペットボトル入り茶飲料が登場したのは1990年代後半。氷入りのドリンクや、冷たいペットボトル飲料が若者を中心に徐々に浸透、今ではスーパーやコンビニエンスストアにお茶の飲料がたくさん並びます。
ただし中国で飲まれているボトル入りのお茶は、砂糖や果汁が入っている甘いものがほとんど。レモンティーやミルクティーだけでなく、ジャスミン茶や烏龍茶、緑茶も甘いので、知らずに飲むとびっくりしますが、中国の人にとって、冷めたお茶(冷たいお茶)は苦みと渋みが強くて飲みにくいという理由もあるそうです。
サントリーの「烏龍茶」がターニングポイント
中国の甘いお茶市場に低糖や無糖のトレンドが始まったのは10年ほど前。サントリーの無糖烏龍茶の味に感銘を受けた若者を中心に、ペットボトル入りお茶飲料の概念が変わったといわれています。
サントリー 烏龍茶 525ml

みんなの総合評価:4.84
国産メーカーの飲料が500ml入りで3.5人民元(約55円)程度なのに対して、サントリーの烏龍茶は約5元(約78円)と高めの設定。
中国の「無糖茶層」は20~30代
いずれも中国国内の工場で生産されるものですが、無糖茶購入層の70%を占める25歳~35歳の若い世代を中心に、健康志向と日本製品信仰がブームを後押しした形です。
庶民の生活が飛躍的に向上していく中で中国はいま、健康、天然、新鮮、減糖がキーワード。
無糖のお茶飲料人気は高まる一方です。商機を見出した国内メーカーがこぞって無糖を謳うお茶を新発売する中、サントリーの烏龍茶、伊藤園の緑茶、麦茶、ジャスミン茶は安定の人気商品。通販サイトの売り上げ上位に常にランクインしています。
油の多い中華料理に日本の烏龍茶のコラボ、そんなスタンダードが中国にやってくる日も近いかもしれませんね。
伊勢本 ゆかり(いせもと ゆかり)
東京都生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業。ヨルダンに2年半、アラブ首長国連邦に10年仕事で滞在の後上海・蘇州を経由、現在は北京在住の フリーランスライター。日本の各種媒体にコラムを専門に寄稿。
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